遺言公正証書
法定相続分 | |
指定相続分(遺言) | 遺留分とは |
遺言の意義 | |
遺言の方式 | 自筆証書遺言 公正証書遺言 秘密証書遺言 |
遺言公正証書の作成 | 事前準備(必要書類など) 遺言執行者 |
作成当日の段取り | |
付言事項 | 記載例 死後事務についての相談先 |
作成手数料 |
法定相続分
遺言がないときの遺産の分け方は民法で決められています。
子と配偶者だけが相続人の場合,子,配偶者ともに各2分の1
養子は実子と同じ扱いです。
子が先に亡くなって孫がいる場合は孫が子の代わりに相続人になります(代襲相続)が,子の配偶者は相続人にはなりません。
配偶者と直系尊属が相続人の場合,配偶者は3分の2,直系尊属は3分の1
配偶者はいるが,子も兄弟もいない場合は直系の親,親も亡くなっている場合は直系の祖父母も相続人になります。
配偶者と兄弟姉妹が相続人の場合,配偶者は4分の3,兄弟姉妹は4分の1
配偶者はいるが,子がなく,直系尊属も亡くなっている場合は,兄弟姉妹も相続人になります。
配偶者も子もおらず,親・兄弟姉妹のみの場合,親が全部を相続します。
同じく親もいないで兄弟姉妹だけの場合,兄弟姉妹が全部を相続します。
相続人が誰もいない場合,遺産は国庫に帰属します。
ただし,故人と生計を同じくしていた者や故人の療養看護に努めた者などの特別縁故者は,相続財産の取得を請求することができます。
なお,被相続人は,一定の事由がある場合には,相続人から相続権を剥奪することを家庭裁判所に請求することができます。
指定相続分(遺言)
以上の法定相続分に対し,被相続人はその意思でこれと異なる相続分を決めることができます(ただし,遺留分を侵害しない範囲内で)。これが遺言による「指定相続分」です(民法902条)。
遺産は被相続人が自由に処分できる財産ですから指定相続分が本来の姿であり,法定相続分は被相続人がたまたま遺言を残さずに亡くなった場合の混乱を避けるための補充的な定めというべきでしょう。
ですから,法定相続分による遺産の分割は個別具体的な実情を考慮したものではなく,場合によってはずいぶん妥当性を欠く結果となることがあります。
例えば,遺産が農地である場合に法定相続分によって分けてしまうと農業は立ち行かなくなるでしょう。
自宅の土地建物でも,相続人がそれぞれの相続分に応じた持ち分を有する共有の状態になりますから,使うにしても処分するにしても面倒な事態になることが多くなります。
これらの不都合は共同相続人全員による「遺産分割協議」により解消することができますが,全員の合意が円滑に成立するとは限りません。
遺言の意義
このように,遺言とは,誰もが多かれ少なかれ残していかざるを得ない財産を自分の意思でもっとも適切な形で処分したり,配分したりするための手段です。
「あとのことは知らない。残された者たちで適当にやってくれるだろう」というのもひとつの考え方かも知れません。
でも,子が成人して自分の家庭を持つと,何よりも自分の妻や子のことが大事になります。
遺産という形で財産が手に入るチャンスができると,つい欲が出るのが人情というものです。
その結果,遺産の配分をめぐって深刻な争いを生じることがあります。
家庭裁判所の扱う事件の中でもっとも長期化するのが遺産分割事件であることは,
法律実務家の常識となっています。
このような争いができるだけ生じないように配慮しておくのが親,夫,妻の義務といえます。
また,法定相続人以外の人(たとえば,介護をしてもらった長男の嫁など)に財産を残したいというケースは少なくありません。
この場合,生前贈与,死因贈与などの生前の契約によることもできますが,遺贈の遺言をするほうが税金面のほかいろいろな利点があるとされています。
なお,最近では,信託銀行がその業務のひとつとして遺言公正証書の作成,遺言執行者の受任,没後の財産管理までを一貫して引き受けるケースが増えています。それなりに費用がかかりますが,得られる安心もまた増大することでしょう。