付言事項(家族にのこすことば)
遺言の本体は財産の処分や祭祀承継者の指定などですが,法的に効力を持たなくても,相続人らに残す言葉を付加することができます。
たとえば,遺言で財産を特定の者に相続させることにした理由,亡き後の処理のしかた,葬式や法要の方法,献体や散骨を希望する趣旨,親族の融和や家業の発展を祈念する旨をつづっておくなどです。

これらは法律上相続人らを拘束する効力は認められませんが,遺言者の最後の意思を表明したものですから,ほとんどの場合尊重されるでしょう。

とくに親族の融和を切に希望する旨の部分が遺言者の生の言葉でつづられていたような場合,相続人間での遺留分の主張に基づく争いを防止する効果が期待できます(記載例)。


ただし,遺言書は,親しい人などを遺言執行者に指定していたなどの場合を除き,亡くなられた直後に開示されるとはかぎりません。
葬儀の方法,献体などの希望を記載しておいても,希望がかなえられないことがあります。
生前からこのような希望を有していること,そのための準備(献体の登録など)をしていることなどを親しい家族に伝えておくことが大事です。

これらの意思を明確にしておくために,事前にこのような希望を有している旨を公証人の面前で陳述し,この事実を公正証書にしておくという方法があります(私権事実実験公正証書)。


最近では,遺骨を粉末にして海や山に散布してほしいという希望を有するかたも増えてきたようです。どんな場所に散布しても良いというものではありませんが,葬送の祭祀として節度をもって行われるかぎり,法律に触れることはないと考えられます。


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