電子公証サービス利用の手引(2)

ここでは当面もっとも利用されると予想される電子定款の認証について説明します。


事前チェック
認証を受ける際には,あらかじめ設立しようとする会社の本店所在地を管轄する法務局に所属する指定公証人に対し,事前に定款,印鑑証明書,資格証明書(法人の場合)をファックスあるいは電子メールで送付し(もちろん持参でもかまいません),定款の記載に誤りがないかのチェックを受けてください。

特に,印鑑証明書などの付属書類の事前送付がないと,発起人の住所氏名の記載が正確であるかどうかのチェックができません。

事前チェックが不可欠なのは,定款に不備があると,指定公証人は申請を却下せざるを得ないからです。

上記の書類送付の際,合わせて電話番号,ファックス番号などの連絡先を通知してください。
条項や字句の訂正などの連絡が必要な場合があります。

福岡・博多公証役場では,事前チェックを担当した公証人がその定款の認証をおこなうとはかぎりません。
認証を受けに来られる日の認証担当公証人が誰かをあらかじめ公証役場に確認し,その公証人をオンライン申請で指定してください。

電子定款の作成・電子署名
ワープロソフトで作成し,Adobe Acrobat を使ってPDF形式のファイルに変換します。

ファイル名は半角英数(31字以内)又は全角英数・漢字・かな・カナ(15字以内)が使用できます。
shiftキーを使う記号やカッコ記号,アットマーク,コロン・セミコロン,ピリオド,スペースは使わないでください。
「.」(ドット)は拡張子の直前の1個だけにしてください。
「-」(ハイフン)は使用しないほうが無難です。

定款本文内でJIS第1,第2水準以外の文字(「﨑」,「德」,「隆」など)を使用する場合(人名,地名),あらかじめAdobe Acrobatの「環境設定」でフォントの埋め込みをしておく必要があります。
「環境設定」→「一般」→「PDFへの変換」→「Microsoft Office」→「設定を編集」で「Smallest file size」から「Standard」に変えます。

ファイルサイズの制限は,10MB(メガバイト)までです。

定款PDFファイルに署名ソフトを使って電子証明書を付加する形で電子署名をします。作成者が数人の場合は全員がこのようにして署名します。
委任を受けて定款を作成する場合は,委任を受けた人が作成者本人として,つまり自分の電子証明書を用いて電子署名をします。

署名ソフトは,法務省のオンライン申請システムにおいて無償で提供されています。
下記から署名ソフト(PDF署名プラグイン)をダウンロードし,操作ガイドにしたがって設定してください。

   http://shinsei.moj.go.jp/usage/zyunbi_PDF.html

マイナンバーカード,住基カードを利用する場合,公的個人認証クライアントソフト(JPKIソフト)でPDFファイルに電子署名しても,オンライン申請システムでは使えません。必ず上記の署名ソフトを使用してください。
(この場合,あらかじめAdobe Acrobatのセキュリティ電子署名の環境設定で,署名方式を「signed pdf」に変更しておきます。)

定款PDFファイルに電子署名を付するのを失念しないようにしてください。
電子署名のないPDFファイルを添付書類にしてオンライン申請をした場合,法務省のシステム及び電子公証センターのシステムは通過しますが,公証人端末での処理の際にはじかれます。
いったん「執務の中止の請求」で取り下げたうえ,電子署名をして再度申請してください。



認証の申請
「申請用総合ソフト」のダウンロード,申請

初めて利用する際は,法務省のサイト(「オンライン申請」のタグ)でオンライン申請のための利用者事前登録を済ませ,必要な情報を取得しておきます。

法務省が提供する「
申請用総合ソフト」をダウンロードします(前記URL)。

申請用総合ソフトの起動

設立しようとする会社の本店所在地を管轄する法務局を選択し,この法務局所属の公証役場と指定公証人を選択します。
福岡・博多公証役場では,認証を受けに来られる日によって認証担当公証人がかわりますので,必ず役場に確認してください。


「ファイルの添付」で署名済み定款ファイルをアップロードし,「送信」します。

 

公証役場への出頭

公証役場では,専用端末でオンラインで申請された定款が認証できる状態になっていることを確認し,申請人に連絡します。

定款が認証を受けられる状態になっているときは,公証役場に出頭してください。

定款を含む私文書の認証は,法律上,公証人が認証を求める文書の作成者本人(発起人から定款作成代理を依頼されて作成し,自己の名で電子署名をした者も作成者本人です。)または作成者の代理人(認証嘱託だけの代理人です。)と面接し,運転免許証などで出頭した人の確認をしたうえ,作成の事実を確認しておこなうことになっています。
公証人と面識のある人については,本人であることの確認書類は不要です。

このとき,認証済み定款などを入れる記憶媒体を持参してください。
記憶媒体は,FD(フロッピーディスク),CD-R,CD-RWまたはUSBメモリーのいずれかです。

公証役場では,申請された定款ファイルに認証の電子署名をし,この認証済み定款ファイルを,持参の記憶媒体に入れ,認証等の手数料の支払と引き換えに,これをお渡しします。


定款作成委任状・認証嘱託委任状について
発起人から定款作成の委任を受ける場合の委任状には,認証嘱託を作成者とは別の人に委任する場合があることを想定して,「定款認証嘱託の復代理人を選任する件」という条項をいれておくのがよいでしょう。

公証役場で定款の認証を受けるについて,定款作成者自身が出向くことができないときは,認証嘱託代理人を選任することができます。
この場合「公証人から定款の認証を受ける行為を委任する」旨の委任状を公証役場に提出しなければなりません。
この委任状には,委任者である定款作成者の実印の押捺と印鑑証明書の添付が必要です。

委任状をPDFファイルにして,定款に用いたと同じ電子証明書を用いて電子署名したものを,認証済み定款ファイルを入れるフロッピーとは別のフロッピーなどの記憶媒体に格納し,これを公証役場に持参して署名の有効性確認を受けることで委任の事実を証明することができます。

また,この電子署名付きの委任状ファイルをあらかじめ公証役場あてにEメールの添付ファイルにして送付しておくことも可能です。

 認証嘱託委任状は電子公証トップページから


指定公証人による認証 
公証人は,定款に付与された電子署名が有効な電子証明書によってなされたものかどうかを確認します。

公証人は委任状,印鑑証明書などを確認したうえ,定款の内容を審査し,問題がなければ,認証を付与します。

認証には以下の態様があります。


a 自認陳述の認証

 これは申請人が定款ファイルに電子署名をしたことを自認する旨を公証人に陳述したことを認証するものです。
 定款作成者本人の認証申請の場合,通常はこの態様になります。


b 代理人による自認陳述の認証

 本人が定款ファイルに電子署名したことを自認している旨を認証申請の代理人が公証人に陳述したことを認証するものです。
 代理人による認証申請の場合はこの態様になります。


c 本人兼代理人の自認認証

 嘱託人のうちの一人が他を代理して自分を含む嘱託人全員が電子署名したことを自認する旨を公証人に陳述した場合です。


謄本の交付

公証役場は嘱託人が持参した記憶媒体に認証済みファイルを格納してお渡しします。
同時に紙ベースの謄本も交付します。

謄本の交付を申請するときは,必ず認証を受けるのと同一の定款をプリントアウト(A4横書)してください。

認証を受けた定款につき,後日,謄本の交付を受ける必要が生じたときは,申請用総合ソフトを使って「同一情報の提供」の申請をしてください。


認証後の手続
認証済み定款などの有効性は,申請用総合ソフトを使って「公文書検証」でチェックすることができます。

法務局での登記申請は,認証済み定款が入った記憶媒体又は紙の謄本を提出します。
このほかの添付書類については法務局の指示に従ってください。

資本金・出資金の預け入れをする金融機関はまだ電子定款に対応していません。
書面による謄本を提出しなければならないので,定款認証の申請と同時に紙ベースによる謄本申請もしておく必要があります。
紙の謄本の作成手数料は 700円+(枚数-1)×20円 です。



認証できない場合
事前チェックを経ていない申請については,内容などに問題があって認証できないこともあり得ます。
誤記や脱字などがある場合,従来の紙文書では捨て印による加除訂正が可能でしたが,PDF形式のファイルでは不可能です。
このような場合,新システムでは,申請を取り下げるか却下とならざるを得ません。
取り下げはオンライン申請システムの中の「執務の中止の請求」を選んで送信します。

却下の理由は,オンライン申請システムのコメント欄に記載されます。

事前に連絡先の告知があっていれば,理由を説明します。
これに沿って是正したうえで,再度申請し直してください。
   
もちろん,申請の取り下げや却下の場合に手数料が賦課されることはありません。

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