事業用借地権設定契約

事業用借地権とは
通常の借地権と異なり,期間の更新がないなど,郊外型レストランや量販店など、事業を目的とする企業と地主間の土地利用関係を成立しやすくした借地権です。

地主側にとっては,
  ・ 契約更新がなく,貸した土地は期間満了したら必ず返ってくる。
  ・ 建物再築の場合も契約期間の延長はなく,建物買取義務もない。
借地人側にとっても,
  ・ 優良な土地を借りることができる。
  ・ 事業目的に応じた建物を建てることができる。
  ・ 土地取得費用がいらず,事業の撤退も比較的容易。
  ・ 原則として高額な権利金や相当地代を支払わなくてもよい。

というそれぞれのメリットがあります。


今回の改正で事業用借地権は2種類になりました。
 どちらも事業用の建物所有を目的とする借地権ですが,期間が「10年以上30年未満」で,更新などに関する借地借家法の規定が適用されないもの(法23条2項)と,期間は「30年以上50年未満」で,更新などを合意で定めることもできるもの(法23条1項)があります。


1 存続期間が「10年以上30年未満」の事業用借地権

従来の事業用借地権と同じもので,期間が,従来は「10年以上20年以下」であったのが,「10年以上30年未満」となったのが改正点です。
借地借家法第3条(存続期間),第4条(更新を前提とする新たな期間),第5条(更新請求),第6条(更新拒絶の正当理由),第7条(建物再築による期間延長)及び第8条(更新関係),第13条(買取請求権)及び第18条(更新後の再築許可等)の各規定は,当然に非適用とされます。
逆に言うと,これらの規定に沿った定めをしたものはこの事業用定期借地権とは認められない,ということです。
 
存続期間が満了しても更新はないので,期間内に建物が焼失したり、あるいは自然災害等により倒壊した場合,建物を再築しても存続期間は延長されません。ですから,あらかじめ一定の場合に借地人のほうから借地契約を解除することができるような特約を定めておく必要があります。

存続期間が満了した場合,建物買取請求権の適用はありません。
したがって借地人は建物を取り壊して土地を明け渡さなければなりません。
ただし、契約時に建物を地主に譲渡して借地契約を終わらせるよう合意することは可能です。

事業用借地権に基づいて建てられた建物を第三者に貸す場合,通常の借家契約だと,借地人(建物賃貸人)は正当事由がないと契約を終了させることができませんが,建物の敷地利用権が事業用借地権である場合は,借地借家法第39条の規定により,借家関係を終了させるという特約が有効とされています。
事業用借地権が設定されている建物と知らずにその建物を借りた借家人は,裁判所に対し1年間に限り明渡しの猶予を求めることができることになっています。


2 存続期間が「30年以上50年未満」の事業用借地権

第22条の定期借地権と同様の規定の仕方により,借地借家法第9,13条の片面的強行法規性を排除し,契約の更新及び建物の築造による存続期間の延長がないこと,第13条(買取請求権)の規定による買取りの請求をしないこと,これらの定めにつき,定めてもよいし,定めないでもよいこととしたものです。
つまり,50年以上の期間を定める場合の定期借地権と同じ性質の事業用借地権の設定契約ができるわけで,「使用継続による契約の法定更新」,「借地権者からの更新請求」,「期間満了前の建物再築の場合の期間延長」,「期間満了後の建物買取請求」などは当然に非適用とはならず,当事者の合意で定めることができます。

新たに50年に満たない期間(下限は30年)の定期借地権設定契約が新設されたわけですが,「事業用」で非居住の建物所有を目的とする場合に限定されます。
そして,通常の定期借地権設定契約と異なって,この契約は「必ず」公正証書でしなければなりません。


事業用借地権設定契約の締結・登記
事業用借地権の設定契約は必ず公正証書でしなければなりません。
このため,事業用借地契約を公正証書で締結するに先だって「覚書」を取り交わしておくのが安全です。

事業用借地権の登記は当事者以外の第三者に対抗するための要件です。
借地権の登記さえしていれば,たとえ借地人が借地上の建物の登記をしていなくても,借地人は底地の譲受人などの第三者に対して事業用借地権であることを対抗でき,地主も借地上の建物の譲受人や抵当権者などの第三者に対して事業用借地権であることを対抗することができます。

登記費用は地主と借地人で折半するのが普通です。もちろん当事者同士の話し合いで決めることができますが,いずれにせよ契約できちんと定めておくべきです。