離婚給付公正証書

離婚に伴う金銭等の財産の給付
離婚するときは,婚姻中に形成された財産の清算が必要です。
これを財産分与といいます。
婚姻中に取得した不動産などの財産が夫の単独所有名義とされていても,共働きの夫婦の場合はもちろんサラリーマンと専業主婦の夫婦の場合でも妻の取り分が認められます。
また,離婚後に一方が生活に困窮することが予想される場合(熟年離婚など)の扶養のための給付も財産分与に含まれます。

夫婦の一方の行為が原因で離婚した場合は,有責者は他方に対する不法行為責任を負い,精神的苦痛に対する賠償として
慰謝料の支払義務を負います。

一般的には以上の二つを離婚給付といいますが,もっと広い意味では,離婚時に未成年子があるときに引き取って養育する親に対して他方の親が支払う養育料もこれに含めることができます。

ただし,財産分与と慰謝料についてはいったん合意が成立すると支払額は確定しますから,あとでこれを増減することはできませんが,養育料については未成年子の養育の状況や双方の親の経済状態が変わったときには,一方の親の申立により家庭裁判所の審判で増減されることがあります。



離婚給付を決めるには
離婚すること自体について合意ができない場合や離婚は合意したものの離婚給付についての話し合いができないため協議離婚届を出せないような場合は,まず離婚と離婚給付を求める調停を家庭裁判所に申し立て,調停委員をまじえての話し合いをすることになります。

相手方が調停に出席して話し合いがうまくいき,調停が成立すれば,合意の内容を記載した調停調書が作成され,これに基づいて離婚の届け出をすることができ,相手方が離婚給付の支払をしないときは,支払うよう家庭裁判所に勧告してもらい(履行勧告),それでも支払がなされないときは相手方の給料を差し押さえるなどして強制的に取り立てる手続(地方裁判所の強制執行手続)をとることができます。

調停がうまくいかず不成立に終わったときは,裁判を起こして判決を得なければなりません(離婚訴訟はもと地方裁判所の担当でしたが,平成16年4月からは離婚調停と同じく家庭裁判所の管轄になりました)。

この訴訟では,離婚とともに財産分与,慰謝料,離婚後の親権者の指定及び養育料の支払を請求することができます。
裁判で離婚などを認める和解や勝訴判決を得ることができたときは,これに基づいて離婚の届け出ができ,また,離婚給付の強制執行も可能となります。


離婚給付公正証書

離婚についても離婚給付についても合意が成立している場合は,調停や裁判の手続は必要ありませんが,調停にせよ判決にせよ,決められた離婚給付を相手方が任意に支払わないときは,強制執行手続をとることができるのに対し,当事者間の合意だけでは即時に強制執行を申し立てることはできません。

一番望ましいのは合意の成立と同時にすべての金銭支払を完了させ,将来の支払義務履行の問題を残さないことですが,多額の慰謝料や未成年子が一定の年齢になるまで支払う養育料などは,毎月の分割払いとせざるを得ないでしょう。
 
この場合,離婚給付に関する合意(金銭の支払約束)を公正証書にしておけば,調停や訴訟手続によらずに強制執行が可能となります。

なお,従来は養育料の強制執行は毎月の支払期限が過ぎた分だけしか申し立てることができず,非常に繁雑でしたが,平成16年4月の民事執行法改正により,一回の申立で済むようになりました。また,この場合の給料差し押さえの限度も従来の4分の1までから2分の1までに拡大されました。

離婚と未成年子の養育料,慰謝料,財産分与などについての標準的な公正証書の条項(Word)です。

 


公正証書作成に必要な書類

□ 双方本人が出頭する場合
出頭者が嘱託人本人であることを証明する運転免許証,パスポートなど(写真付きの公的証明書)及び印鑑(認め印で可),または印鑑登録証明書1通及び実印(3か月以内に発行されたもの)

□ いずれかの代理人が出頭する場合
委任者本人の実印が押捺された委任状,印鑑登録証明書(3か月以内に発行されたもの)
出頭者が委任状に記載された代理人その人であることを証明する運転免許証,パスポートなど(写真付きの公的証明書),または実印及び印鑑登録証明書1通(3か月以内に発行されたもの)

なお,当事者の一方は相手方の代理人になることはできません。
一人で双方の代理人となることもできません。
成年の子は親のいずれかの代理人となることは可能です。
 
また,委任状は,作成する公正証書の内容が具体的に明記されたものでなければならないので,あらかじめ合意の内容について公証役場と打ち合わせをしたうえで,所定の委任状書式を使用し,委任者の実印を押捺してもらうようにしてください。)

□ 財産分与の目的物が不動産である場合
  登記簿謄本
  未登記のときは,面積や構造(建物)が分かる実測図面など
  固定資産評価証明書または納税通知書

□ 財産分与の目的物が預金,保険や株式などの場合
  預金通帳,保険証券,株券などの債券証書のコピー


離婚給付公正証書の作成手数料

一括払いの慰謝料についてはその金額に応じて,分割払いの養育料については10年分の金額に応じて,遺言のところに掲げた表に基づいてそれぞれ手数料が算定され,これが合算されます。

養育料は,子供の数が何人であっても,その合計額が計算の基礎となります。

たとえば,慰謝料額が500万円だと1万1000円,養育料が子供二人分で毎月合計3万円とするとその10年分の360万円に対する同じく1万1000円の合計2万2000円になります。